画家と語る 2

2003315

  遠くに見える雲が今朝は入道雲になっていた。ここバリでは雨期はサカ暦の新年にあたる「ニュピ」までだというのは、昔の人の知恵なのだろう。今年は42日、もうじき爽やかな乾期になる。

  太陽銀行の壁画のもう2枚が進んでいる。右にはペンジョール(祭りの日に家の前に立てる竹飾り)の先に飾る太陽を摸した「タミアン」と「葉」。左は海と空を繋いで太陽や人物を配した画家独特の空中のコンポジション。建物の暗い方に掛ける右の絵は落ち着いたみどりが基調になり、左は道路に向かって総ガラスで明るいので、空と海が溶け込んだような青。頭に描いたイメージが過去に描いた絵をキャッチして全体の調和が取れてくる。足りなかったみどりを買ったので、一気に仕事が進むようだ。自分のイメージ通りの色があるというのは大事なこと。大作をやると疲れが速いらしい。ベッドに横になって―ヘミングウェイを読む。

  お金の使い方。ヘミングウェイもいくつか家を持ち、またたくさん旅行してそれに当てる金額は相当なものだったに違いないが、旅先で知り合った人にポンと奨学金を何ヵ月分かあげたりもしている。また、キューバにいた頃、ちょうどアメリカとの間が悪化してアメリカ人である彼の身辺が怪しくなり、持っていたミロとグリの作品をどうやって持ち出そうかと苦労したらしい。絵描きであるピカソやマティスはやはりヨーロッパのあちこちに家や部屋を持ち、また旅先で制作していて、生活のこまごました部分はそれぞれに支える人を雇っている。そういうお金の使い方をしている。画家もけちけちしたことは好きじゃない。だがいつもそれを考える必要がある。

2003316日 

  朝、右の「葉」の絵を描きながら―――壁画のこの3枚は朝の一番エネルギーが充実している時にやることにした。後の時間は他の絵をやる。この絵はいい絵になった。看板絵じゃダメ!ヘミングウェイがライフ誌に依頼されて1回、何語でいくらの連載の契約をした。書いているうちにだんだん長くなって、〆切も長くなるけど、自分ではどうしても書きたい文章を書くんだと。安い契約でも納得できない仕事はやはり出来ないという事。

  「このところ作品はどんどん良くなって来ている。」

  「ピカソ、マティス以後はやはりダメだね。アメリカの芸術はアメリカの力で売ったけど、、、、ニューヨークの近代美術館の上の方なんか見たくないよ。日本なんかもよく買ったよね、高いお金出して。日本の絵描きを買えば良いのに。」

  去年の5月にロンドンのTATE MODERNで見た「ピカソ、マティス展」以来、今まで以上に彼らのカタログを良く見ている。ピカソはこう描いている、自分はどう描くか。マティスはこう描いている自分はどう描くか。コンポジション、筆使い、筆の勢い――フォークをこう曲げて描いている、影をこうつけている、そして又、自分はどう描くか。

  雨期で伸び放題に伸びる草を、夕方絵を描き疲れた頃、鎌を持ち出して刈るのが画家の日課。おかげで太ももに肉が付いて来たと喜んでいる。